仲村渠 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
今晩は、みなさん。 とりわけ果実をお好きな御婦人がたに申し上げるのでございます。 手前のからだは今夜果物店をひろげたのでございます。この真夜中に瓦斯燈ひとつ点けずとも はい この通り手前どもの果実は艶艶と光沢がよいのでございます。 さあさあ、なんなりと一ツ、 このすばらしい朱欒の出来はどうでございます。この頸かざりにした紫真珠。葡萄はいかがでございます。 雪国のお方様にはこのまだほてつてゐるバナナの房がよろしうございます。 南の方のおかたにはこの涼しい一顆の梨をさしあげるでございませう。 特に故郷を恋しがつてゐらつしやるお方にはここに蒸立ての栗も用意してございます。 大輪の柘榴も割れたばかり夜露に濡れて笑つてゐるのでございます。 はい。これはパパヤで。御覧の通りもぎたてで。したゝるお乳はまるで蝋涙のやうでございます。はい。このお乳で酋長のひとり娘はお湯を使ふのださうでございます。 はいはい。椰子の実もありますでございます。おさといお方には猿の臭ひが致しますのは致し方がないのでございます。 暑がりのお方さまはこの水瓜の湯槽におつむをおひたしになればよろしうございます。 一口で喉のおかわき
仲村渠
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