中谷宇吉郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
米國の東海岸、ニュー・イングランド地方には、流石に古い傳統が殘っていて、ジャズの國アメリカでは一寸考えられないような料理がある。「クラム・ベーク」というのが、その一つであって、今度の會議の懇親會で、初めて食べてみたが、なかなか風趣のある料理である。これは東部でも、海岸地方にだけ殘っているもので、日本でも珍しい料理の一つであろう。 料理は野外でやるので、廣々とした草地の中に、まず大きい石塊を並べて、四角形の場所を作る。その中は六尺に九尺くらいあって、その中で太い丸太をどんどん燃やす、下の地面も周圍の石塊も、それですっかりやける。丸太が燃え切った頃には、眞赤なおきが、この六尺と九尺の區劃の中に一杯並ぶ。このおきと燒け石との上に、ひじきのような褐色の海藻を、厚さ二寸くらいに一杯に敷きつめる。これは生の海藻をそのままおきの上に載せるのであるから、湯氣がもうもうと立って、なかなか壯觀である。 この海藻の上に、蝦と玉蜀黍と野菜とを載せ、その上にまた海藻を敷く。そしてその上にクラムという貝を並べて、上からテント用のズックですっかり蔽ってしまう。そして何時間か待っていると、海藻から出る蒸氣で全部のもの
中谷宇吉郎
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