西田幾多郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
文化の発展には民族というものが基礎とならねばならぬ。民族的統一を形成するものは風俗慣習等種々なる生活様式を挙げることができるであろうが、言語というものがその最大な要素でなければならない。故に優秀な民族は優秀な言語を有つ。ギリシャ語は哲学に適し、ラティン語は法律に適するといわれる。日本語は何に適するか。私はなおかかる問題について考えて見たことはないが、一例をいえば、俳句という如きものは、とても外国語には訳のできないものではないかと思う。それは日本語によってのみ表現し得る美であり、大きくいえば日本人の人生観、世界観の特色を示しているともいえる。日本人の物の見方考え方の特色は、現実の中に無限を掴むにあるのである。しかし我々は単に俳句の如きものの美を誇とするに安んずることなく、我々の物の見方考え方を深めて、我々の心の底から雄大な文学や深遠な哲学を生み出すよう努力せなければならない。我々は腹の底から物事を深く考え大きく組織して行くと共に、我々の国語をして自ら世界歴史において他に類のない人生観、世界観を表現する特色ある言語たらしめねばならない。本当に物事を考えて真に或物を掴めば、自ら他によって表現
西田幾多郎
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