仁科芳雄 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
今日の純物理學界に於て,最も重きをなす世界人は Niels Bohr である.Planck 老い Einstein 衰へた今日,其右に出づるものは見當たらない.勿論各國共その國内に於ては色々の意味に於て權威者はある.又各專門に於てそれぞれの第一人者は存在する.然しこれ等の人々を一堂に集めた時,名實共に備はつた碩學を選んだとすれば,Bohr はその首位に推される人である. それは今日迄の Bohr の業績が,自然科學の最も深い基礎を左右する大飛躍であつたからである.從つて多くの科學は何等かの形でそのお蔭を蒙つて居る.否科學のみならず吾人の思想,觀念にも重大な影響を及ぼさうとして居るのである.その結果でもあり又本來の性格でもあるが,Bohr の關心は科學,哲學等の廣汎な範圍に亙つて居る.興味を惹かぬ領域の事は輕蔑するのが人の常である.その反作用としてその領域の人からは相談を持ちかけられない人となつてしまふ.Bohr は物理學以外に化學,生物學等の廣い範圍に同情と理解とがある.而かもそれが下手の横好きといふのではなく,問題の核心を把握する素質を備へて居るのであるから,誰しも敬畏する道理である
仁科芳雄
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