林芙美子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
梟の大旅行 林芙美子 むかしあるところに、梟が住んでいました。ふかいふかい森のなかで、晝も、ほの暗いところなのです。あんまり暗い森のなかなので陽氣なお天氣の好きな、小鳥や、りすも、みんな、森のそとがわに出て住んでいました。 梟はたった一人ぼっちで淋しいので、晝間も歌をうたって暮していました。 ぼろ着て奉公! ぼろ着て奉公! 梟が、ぱたぱたと羽ばたきをして、こんなうたを歌うので、森のなかの楡の木は、ほんとに淋しくなって退屈で仕方がありませんでした。 ああ、また梟が何か云っている。どうして、あいつはあんなにいんきでじめじめした奴なんだろう。少しは、陽氣な歌でもうたってくれるといいんだのになアと、ぶつくさ云うのです。本當に森のなかはじめついていて、地びたの苔は、水氣でぐっしょり濡れていました。 梟は、この森で生れたのではないのですけれど、もうこの森へ來て三年ばかりになります。誰も友達がなく、淋しそうに一人で暮しています。 「おい梟君、君はいったい、何が愉しみで生きているンだね?」 と、楡の木がききました。 梟はきょとんとした表情で、 「わたしかね?」 と首をかしげて、猫の眼のような、金色に光
林芙美子
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