久生十蘭
久生十蘭 · 日本語
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久生十蘭 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
恍けた手紙 「……手紙のおもむき、いかにも承知。……申し越されたように、この手紙の余白に、その旨を書きつけておいたから、これを御主人に差しあげてくれ」 「それで、御口上は?」 若いくせに、いやに皺の多い古生姜のようなひねこびた顔で、少々ウンテレガンらしく、口をあけてポカンと顎十郎の顔を見あげながら、返事を待っている。 「わからねえ奴だな。……だから、お前の持って来た手紙のはしに、かならずお伺いいたしますとちゃんと書いてあるというンだ」 へへえ、と、まだ嚥みこめぬ顔で、 「つまり、これをまた持って帰りますれば、それでよろしいので、……なんだか、妙だ」 顎十郎は癇癪を起して、 「なにも妙なことはねえ。お前のほうがよっぽど妙だ。なんでもいいから、これを持って帰って、お前の主人に渡しゃアそれでいいんだ」 「へい」 「わかったか」 「ええ、まア、……わかりました」 「わかったら、さっさと帰れ」 「では、さようなら」 「なにがさようならだ、馬鹿にした野郎だ」 文筥を手に持ってノソノソ帰って行く中間のうしろ姿へいまいましそうに舌打ちをひとつくれて、二階の自分の部屋へもどって来る。顎十郎、または『顎化
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