平野零児 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「あなた、お国は?」 と聞かれる度に、私はちょっと自分で苦笑し乍ら、ためらうような調子で答える。 「丹波篠山ですよ」と、 別に丹波篠山で生れたからとて、少しも卑下する理由はない、それなのに、ついこんな調子になるのは何故だろう。 丹波篠山は、成程山間の都会だ。しかし日本のような山獄が、全土の脊骨となって貫いているような地形の国では、山間の都市や村落は無数にある。篠山だけが山間の部落ではない。然もわが篠山は、近畿と山陰地方とに跨がる、丹波、丹後、但馬の三丹地方中での、盆地に拓けた都市、旧城下町で、京都が王城であった頃の、王城に近い都市でさえあった。 それなのに、丹波篠山だというと、ニヤリと笑う人もある。そのニヤリには、さげすむとまではいかぬが、稍からかい気味なものを含んでいる。日本の代表的な山家と思い込んでいる人が多いからである。戦前の第四師団の七十聯隊があった頃は、その管下の近畿地方の青年は、ここで軍隊教育を受けたから、篠山は知っている。それ以外は、ここを郷土とする者以外には、余りその土地さえ踏んだ人は尠ない。それなのに、丹波篠山の名は大袈裟にいえば天下にとどろいている。 それほど有名に
平野零児
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。