平林初之輔 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
□ 文壇の人にあうと探偵小説をすいている者が多いようである。『新青年』四月号のマイクロフォンを見てもその一班が知れる。ところが探偵小説の作者や翻訳者の中には、探偵小説にあきたりない感じをもっている人が少なくとも少しはある。江戸川乱歩氏はときどきそういう口吻を洩らす。延原謙氏も探偵小説でないものが翻訳してみたいというような口吻を洩らしたことがある。少なくも短銃物は真っ平だと考えている人はそうとう多い。挿画にでもピストルはかきたくないと松野氏も言っていたように記憶する。 「文壇小説」も「探偵小説」もひとしく行き詰まって新局面の打開を求めているらしいことが、双方の陣営から起こる嘆声によりてうかがわれるように思う。 □ 僕は体質上脂肪を要求しているので、鰻なら三人前位くうが、他のものにはあまり食欲がない。頭の方もそれに似ていると見えて、脳細胞をしびらせるような深刻なものを一番に要求する。こういう要求に答えてくれたものは今までにドストエフスキー一人位である。探偵小説にも僕はそういう種類のものを喜ぶこというまでもない。 □ トルストイは、子供の時分の思い出を書いた中に、甘い菓子を食いながら、ベッド
平林初之輔
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