堀辰雄 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
青葉頃になると、どうも僕の身體の具合が惡くなるのです。それにやられまいと思つて、隨分用心してゐるのですが、いつのまにかやられてゐます。こんどなども、ちよつと氣分が惡かつたので、二三日安靜にしてゐたら、それからずつと微熱が續いて、もう半月ばかりになるのに、いまだに寢込んでゐる始末です。それにどうしたのか、足がなやんでなりません。あの足首の、丁度靴下が一番先に穴のあいてしまふところですが、あそこのところがへんに痛い。もうせん、靴下をはいたら大きな穴があいてゐたが、穿きかへるのが面倒くさかつたので、そのまま出かけたところ、途中でそこが痛くなつてきて弱つたことがありましたが、そのときのことを、いまだにそいつが根にもつてゐるんぢやないか、といふ氣さへしてゐます。もつともそのときは片つぽだけでしたが、いまは兩足が痛い。起居にも不自由を感じてゐる位です。 こんなときには誰か友人でも來てくれるといいなと思ひますが、さうなると意地の惡いものでなかなか來ない。やつと今日、立原道造君が來てくれました。何か手に大きな紙をまいてもつてゐる。何だと思つたら、それは僕がこの間冗談半分に頼んでおいた僕の輕井澤の別莊の
堀辰雄
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