牧野信一 · 일본어
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원문 (일본어)
――嘘をつくな、試みに君の手鏡を執りあげて見給へ、君の容色は日増に蒼ざめてゆくではないか、吾等は宇宙の真理のために、そしてまた君が若し芸術に志すならば、芸術のために蒼ざめるべきではないか――。 こんな風な調子の手紙を三枚四枚五枚と書いてゆくうちに夜は白々と明けてきた。サンタ・マリアの暦をはぐと、四月の十二日(一九三三)であつた。 暦の端には、 「聖女ローザ童貞――我汝等に告ぐ、総て其の兄弟を怒る人は裁判せらるべし。」とあつた。 ふるえる私の憤りは止まなかつた。 私は封筒をふところにした寝間着の襟を掻き合せ、左右の手にガマ口とステツキを握つて深い朝霧の中に飛び出した。前の晩に芝居見物に上京して来た私の母親が、私の子供に与へた子供の学資金と、差押への札を貼られてゐた私の税のために私に借したいくらかの紙幣がそのガマ口の中に這入つてゐた。 ポストの前に、私は恰もポストのやうに突つ立つて稍暫く考へたが、やはりこの手紙は彼に手渡した方がおだやかだと思つた。彼は嘘ばかり吐いた「偽大学生」であつたが、少くとも私に好意を抱いて朝となく夜となく私を訪ねてゐる以上、これを郵便に托するのは残酷過ぎると思つた。
牧野信一
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