牧野信一
牧野信一 · 日本語
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牧野信一 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
或望遠鏡製作所に居る友達を私は頻りに訪れてゐる、私は或望遠鏡を彼に依頼したのである、その眼鏡の構造を此処に述べるのは大変だから省かう。 どうせ忙しい友達が仕事の合間を見計つて徐々と組み立てるのだから何時仕上るか解らない、彼と私と共同で設計した少々型ちの変つた眼鏡でウマク行けば今の私にとつては得難い侶伴になる筈だ。――私達は静かに亢奮してギンザ裏のバーを次々に工房に変へて行つた。彼のポケツトからはコンパスや鉛筆や定規などが煙草の間もなしに出し入れされるのであつた。私は紙挟みを開いて、ケント紙に線を加へ数字を記入しながら、滅多に眼ばたきもしなかつた。 ――独りの部屋に帰つて窓先きを眺めてゐると棕櫚の樹の葉蔭に何時もの梟が来てゐる、誰も悸す者がないので彼女は明方になると其処に戻つて来て終日のネグラにしてゐる、或日の夜明け時に飛び帰つて来る姿を私は一度見たこともある。――私の眼鏡が出来上ると憐れな彼女は私の窓に悸かされはしないだらうか? と私は怖れた、そんなことは今迄忘れて友達との設計のみに没頭して来たのだつたが! 私の窓から突き出るであらう遠眼鏡は鉄砲の筒先きに似てゐる、伸し切ると細くステツ
牧野信一
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