牧野信一
牧野信一 · 일본어
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牧野信一 · 일본어
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원문 (일본어)
芝区で、二本榎の谷間に部屋を借りてゐた。既に七月の夢が消えてゐた。寺院の鐘の音が霧の深い崖下に渦を巻いた。妻子は私の因循にあきれて、海辺の故郷に赴いてゐた。 私は寺院の鐘の音では夢を破られなかつたが、直ぐの窓下で芝居の幕あきの調子で鳴る紙芝居師の拍子木の響で、毎朝目を醒されると、別に自分を役者にも観客にもなぞらへるわけでもないのであつたが、やはり何かしら遊戯的気分に誘はれるのであつた。それが聞える間だけだが――。 「お早う、先生!」 ハルミが露路を隔てた真向きの窓から呼びかけるのであつた。 「愉快さうだね、お早う……」 「ゼラニユウムに水をやらなければ駄目ぢやありませんか、お日様はもう高いのよ。」 私は窓ぎはの白い卓子の上で、甲虫の脚をそろへ、蝶の翅を展して防腐剤を注射するのであつた。 抜萃――。 「サンタ・マリア・カレンダー」(七月△△日) 「聖フランシスコ・サレジオ――完徳とは、己れの欠点と戦ふことなり。己れの欠点を知らざれば戦ふこと能はず。」 ハルミのことを私は「暦をはぐ娘」と、未だ描きはじめもしない画の題に選んでゐた。私の仕事を見物に来て、彼女は壁の暦の文字を朗読するのであつた
牧野信一
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