槙村浩
槙村浩 · 日本語
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槙村浩 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
営舎の高窓ががた/\と揺れる ばったのやうに塀の下にくつゝいてゐる俺達の上を 風は横なぐりに吹き 芝草は頬を、背筋を、針のやうに刺す 兵営の窓に往き来する黒い影と 時どき営庭の燈に反射する銃剣を見詰めながら おれは思ふ、斃されたふたりの同志を 同志よ おれは君を知らない 君の経歴も、兵営へもぐり込んで君が何をしたかも 兵営の高塀と歩哨の銃剣とはお互の連絡を断ってしまった おれは君たちが おれが君たちを探したやうに、あせりあせり熱心に俺達に手を差し出したのを知ってゐる おれと君とは塀を隔てゝめくら探しにお互ひを求め合ひ おれの手と君の手は すれ/\になったまゝ塀の間で行き違ったのだ おれは想像する 破れたストーヴについて、不自由な外出について、封を切られた手紙について、不親切な軍医について、横っ面へ竹刀を飛ばす班長について、夜中にみんな叩き起す警報について、 無意味な教練のやり直しについて 君らがいかに行動を以て同じ兵卒をアジったかを そして 誰が戦争で儲け、誰が何の恨みもない俺達に殺し合ひをさせるか、誰が死を賭して俺達のために闘ひ、何が俺達を解放するかを くたくたに疲れた演習の帰りに
槙村浩
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