槙本楠郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
びつくりするほど冷たい井戸水を、ザブ/\と二つのバケツに一ぱい汲むと、元気な槇君はそれを両手にさげて、廊下から階段を登つて、トツトと自分の教室へ帰つて来ました。 すると、だしぬけに、四五人の掃除当番の者が、口々にかう叫びました。 「おい君、五年生のやつらが、僕たちのぞうきんを持つてつちやつたぞ!」 「おれ、ほうきで追つかけたんだが、どうしても返さないんだ――」 「三人はいつて来て、だまつて探してゐたが、『おう、たくさんあるな、一枚かりてくよ』つて、持つてつちやつたんだよ!」 「上級生だつて、なまいきだ! ねえ槇君、おれたちも、しかへしに、何か、かつぱらひに行かう! ごみとりだつて、ほうきだつて、あいつらの帽子だつていゝぢやないか! かうなれア非常時だ――」 「アツハ、『非常時』はすげエや。非常時日本……いや、非常時四男組だア……」 みんなワイ/\騒ぎ出しました。だまつて窓ガラスを拭いてゐた、女のやうなおとなしい水村君も、窓からおりて来ました。 「ぞうきんは、これつきりだね?」 槇君はさう云ひながら、落着いて、残つてゐるぞうきんを、床の上に並べて見ました。四つあります。けれど、みんなボロ
槙本楠郎
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