槙本楠郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「来た来た!」 「やあ、来たぞ来たぞ!」 「汽車だ汽車だ!」 「みんな用意をしろツ! この汽車には張作霖が乗つてるんだぞツ!」 子供たちは線路の中に躍り上りました。気の早い子はもう尻をまくり上げ、はだしになつて、その草履をふところや、脊中の帯の下にねぢ込みました。 「さあ気を落ちつけて、そして大急ぎにバクダンを埋めるんだ! いゝか? 大急ぎにやるんだ! すんだら早く飛び出せ!」 大将の吉はレールに飛び上つて命令しました。小さい大勢の子供たちは尻を突つ立つて、大騒ぎしながらレールの下に団栗を埋めにかゝりました。 まつ直ぐな一本道の線路です。草の茂つた原つぱのまん中です。線路の一方の端は賑やかな霞んだ町に続き、一方の端は青々と茂つた杉林の中に入つて消えてゐます。 汽車は町の方からだん/\近づいて来ます。初めは鉛筆の尖で突いたほどの黒い点でしたが、だん/\大きくなつて豆粒ほどになり、甲虫ほどになり、それから急にムクムクツと尨犬のやうに大きくなつて、目も鼻も短い足までも見えるやうに近づいて来ました。 みんなはバタ/\ツと線路の外へ飛び出して行きました。そして土堤に平れ伏しました。けれど大将の吉
槙本楠郎
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