正岡子規 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
病の牀に仰向に寐てつまらなさに天井を睨んで居ると天井板の木目が人の顔に見える。それは一つある節穴が人の眼のように見えてそのぐるりの木目が不思議に顔の輪廓を形づくって居る。その顔が始終目について気になっていけないので、今度は右向きに横に寐ると、襖にある雲形の模様が天狗の顔に見える。いかにもうるさいと思うてその顔を心で打ち消して見ると、襖の下の隅にある水か何かのしみがまた横顔の輪廓を成して居る。仕方がないから試に左向きに寐て見るとガラスごしに上野の杉の森が見えてその森の隙間に向うの空が透いて見える。その隙間の空が人の顔になって居る。丁度画探しの画のようで横顔がやや逆さになって見えるのは少し風変りの顔だ。再び仰向になって、今度は顔のない方の天井の隅を睨んで居ると、馬鹿に大きな顔が忽然と現れて来る。 かように暗裏の鬼神を画き空中の楼閣を造るは平常の事であるが、ランプの火影に顔が現れたのは今宵が始めてである。 『ホトトギス』所載の挿画 年の暮の事で今年も例のように忙しいので、まだ十三、四日の日子を余して居るにもかかわらず、新聞へ投書になった新年の俳句を病牀で整理して居る。読む、点をつける、それぞ
正岡子規
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