正宗白鳥 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
先夜室生犀星君の逝去を電話で最初に知らせて来た或る新聞記者は、同君についての私の感想を求めた。が、私は咄嗟に返答することが出来なかったので固く断った。私は現代作家論を幾つも書いているが、犀星論はまだ一度も書いたことがなかったように思っている。それについていろいろ考えながら眠りに就いた。翌日弔問のために、氏の住所を記した紙片を持って出掛けたが、一二度新聞社の自動車で、氏の家の前に立ち寄っただけなので、単独では方角が分らなかった。タクシーの運転手にも分らないので乗車を断られた。あちらこちらまご/\した果て、通りがかりの巡査に訪ねて、その巡査に案内されて、ようやく目的地にたどりついたのであった。 はじめて氏の庭園を観た。小やかな庭園であっても、私などとちがった芸術心境をそこに観たような感じで、座に就いてからも、いろ/\に氏の作品について空想を恣にして、私自身の作品との相違を考えたのであった。 犀星君は無論詩人である。生れながら詩を欠いでいるような私の窺い知らない純粋な詩人であるらしい。氏は自分の好みの庭を造るとか、さま/″\な陶器を玩賞することに心根を労していたらしい。そういう芸術境地が氏の
正宗白鳥
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