三浦環 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
ドイツへ行ってリリー・レーマンについて歌の勉強をしようと思って三浦政太郎と一緒に横浜を出帆したのは、一九一四年(大正三年)五月二十日のことでした。 私は非常に船に弱いので船の中ではずっと寝通しでしたから、香港に着きました時はほっと致しました。それにイルミネーションが綺麗でしたので、余計に明るい気持ちになりましたが、ここでお船は一晩お休みしたのでやっと元気を取りもどしました。 お船が香港に着く前の晩のことでした。私は生まれて始めて洋服を着ようと思って三浦に話しましたら、 「日本の婦人が洋服を着ると、胴が長くて足は練馬大根のように短く、まことにみっともない。船中では着物を着ていて、向こうへ着いて、どうしても洋服を着なくてはならなくなるまで洋服を着るのはお待ちなさい」 「だって私は、まだ一度も洋服を着たことがありませんから、向こうへ着いてから始めて着るのではよけいみっともないと思いますの、だからお船の中で着馴らして少しでも着かっこうの良いようにしておきたいのよ」 「向こうに着いてから、西洋の婦人の着方をよく見習った方が良い。船中で妙な癖でもつくとその方がよけいみっともない」 「いいえ、妙な癖

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