三木清 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
ギリシア人の産出した文化の一つに修辞学がある。それはなかんずくアテナイ文化において――プラトンの伝えるようにアテナイ人は言葉を愛し、多く語ることを好んだ(φιλ※λγ※ τ κα※ πολ※λογο)――極めて重要な位置を占めていた。しかし今日、修辞学はほとんどまったく閑却されている。アリストテレスの諸著作のうちでも修辞学に関する書は恐らく最も研究されないものに属している。これに対して現代の哲学においてはなはだ大きな意義を獲得するに至ったのは解釈学である。解釈学はもと文献学の方法であるが、今日それは哲学の一般的方法にまで拡げられ高められている。解釈学もギリシアの啓蒙時代に修辞学と結びついて成立したものであるが、それが独立の学として発達するに至ったのはアレクサンドリア時代の文献学においてである。言い換えれば、修辞学がギリシア文化の開花期の産物であるに反して、解釈学はギリシア文化の発展が一応終結した後その黄昏にいわゆるミネルヴァの梟として現われたのである。そのことは解釈学の性質に相応している。すなわち解釈学はすでに作られたもの、でき上った作品に対して働く。すぐれた文献学者ベェクの言葉を借り
三木清
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