三岸好太郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
高い北の窓から朗かな光線が流れ、ストーブは居心地よく調節がとれた。整頓されたアトリエで画を描く事は実に気持ちがよい。 一時間、二時間、三時間。 少つとした疲労がくる。ソフアーに横になる。ウトウトと眠くなる。 安心とつかれが同時に自然な安眠をさそつたのだ。 ○ 彼等の全勢力を尽して築き上げた鋼鉄の船、エンヂンは完全に燃えて赤い火を吹き、船体は黄色に塗られた。船員は全部赤いジヤケツを身軽に着込み、大きな大きな靴をはいてガンヂヨウに大船に立つて並んでゐる。 船長も居なければ事務長も居ない。パイロツトも居ない。行先さえもわからない彼等の大きな船。 而し彼等は彼等の部処を完全に守れる豊潤な頬を持つた青年達。 正に出発をしようとしてゐる。 ○ 肩を誰かにたゝかれた。 びつくりして目をさます。 真剣な激情的な視線を僕は僕の体中に感じた。 僕はすぐ立ち上つて前進した。 そうしてデスクの上に白い紙を展げ宣言文を書き始めた。 「僕はかねがねからこれ等の人達に魅力を感じ、シツトをほしいまゝにして居たのだ。そうしてそれ等の強い刺戟の中に飛び込む事は、僕にとつて大きな幸ひだ。これ等の精鋭な新人達と共に新芸術の研
三岸好太郎
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