宮沢賢治 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
まなづるとダァリヤ 宮沢賢治 くだものの畑の丘のいただきに、ひまはりぐらゐせいの高い、黄色なダァリヤの花が二本と、まだたけ高く、赤い大きな花をつけた一本のダァリヤの花がありました。 この赤いダァリヤは花の女王にならうと思ってゐました。 風が南からあばれて来て、木にも花にも大きな雨のつぶを叩きつけ、丘の小さな栗の木からさへ、青いいがや小枝をむしってけたたましく笑って行く中で、この立派な三木のダァリヤの花は、しづかにからだをゆすりながら、かへっていつもよりかゞやいて見えて居りました。 それから今度は北風又三郎が、今年はじめて笛のやうに青ぞらを叫んで過ぎた時、丘のふもとのやまならしの木はせはしくひらめき、果物畑の梨の実は落ちましたが、此のたけ高い三本のダァリヤは、ほんのわづか、きらびやかなわらひを揚げただけでした。 ※ 黄色な方の一本が、こゝろを南の青白い天末に投げながら、ひとりごとのやうに云ったのでした。 「お日さまは、今日はコバルト硝子の光のこなを、すこうしよけいにお播きなさるやうですわ。」 しみじみと友達の方を見ながら、もう一本の黄色なダァリヤが云ひました。 「あなたは今日はいつもより
宮沢賢治
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