岸田国士
岸田国士 · 日语
岸田国士 · 日语
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原文 (日语)
カルナツクの夏の夕 岸田國士 画家のO君から手紙が来て、静かな処だ、やつて来て見ろといふことでした。 細君からも何か書き添へてあつたやうに思ひます。 巴里から十何時間、ブルタアニュの西海岸で、その昔ケリオンといふ不思議な小人が住んでゐた処です。 宿はさゝやかなホテル・パンシヨン、国道を距てゝ美しい牧場などがありました。 海へも遠くはない。 聖堂の古風な鐘楼、広場の物語めいた泉水、それに、空は低く、森は黒ずんでゐました。 小川のへりに、牛が睡つてゐる。 女はレエスで髷をかくしてゐる。 カンナが赤く黄色く、食堂のテラスに咲いてゐました。 宿には、もう十人近くの客がありました。家族連れが多い。 夕食が済むと、みんなテラスへ出て、話しをしたり、歌を唱つたりしました。グラン・ギニヨル(物凄い芝居)の声色を使つて、女どもを喜ばせてゐる一癖ありさうな若者などもゐました。 ある晩、瓦斯会社に出てゐるといふM氏の細君が、「あなた方は若い方ばかりのくせに、どうして踊らうとなさらないの」と、さも心外らしく、一座の人達を見まはしました。 「ぢや、奥さん、ピアノをどうぞ」Sといふ工手学校の生徒がやり返しました。
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