岸田国士
岸田国士 · 日语
岸田国士 · 日语
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原文 (日语)
戯曲を書きはじめてやつと二三年、小説といふものはたゞの一度も書いたことのない私に、いきなり新聞の連載小説を書けといふ注文なので、私は面喰つた。 実を云ふと、戯曲を書いて雑誌に発表するといふことが私にはなんだか不自然に思へてしかたがない時分であつたし、頭のなかは、「新しい演劇運動」のことでいつぱいで、月々雑誌にのる短篇小説もろくに目を通さず、まして、新聞の続き物などは、別に軽蔑してゞはないが、つい、拾い読みをしたこともないのである。 そこへ、なにかの間違ひではないかと思ふやうな注文である。よく考へてみると、これは多分、朝日新聞の気紛れであらうと思つた。なにか目先を変へてやらうといふ案に違ひない。先輩の誰かの推薦があつたかも知れない。こつちにはなんの用意もないが、稿料をとつて小説の手習をするやうな贅沢な真似ができるなら、ひとつ、やつてやらうかと心が一時はうごいたが、それにしても話が急すぎる。二た月では準備ができさうもない。せめて半月はゆつくり考へたい。そこで、さういふ風に断りを云ふと、それが聴き入れられた。何れまたといふことで、一年すぎ、忘れてゐた頃、また話がもちあがつた。別に用意が整つて
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