上村松園 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
砧 上村松園 謡の「砧」に取材したものですが、章句の中には格別に時代が決定されていませんので、私の自由に徳川時代元禄から享保頃迄の人物にこれを表現してみました。最初は横物にして腰元の夕霧も描くつもりでしたが、寸法が制限されてますのでこの構図になりましたが縦七尺七寸、横四尺あります。 九州芦屋の里に家柄のある武士があり、訴訟事があって都に上ったが、かりそめの旅が三年という月日を数え妻は淋しく夫の帰りを待ち詫びていたところが、三年目の秋、夫に仕えて都に上った腰元の夕霧が帰国して夫の帰る日の近いことを喜ばしくも報じる。この話の最中に何処からともなく物音が聞えてくる。「あの音は何か」という妻女の問いに夕霧はあれこそは賎が女の打つ砧の音だと告げ、蘇武が胡国にさすらえていた折、故国にあるその妻が寒暑につけても夫の身を案じつつ打った砧の音が遠く万里を隔てた夫の枕上に響いたという故事を話して聞かす。 この話を聞いて妻はそれでは私も砧を打ってみようという。夕霧は、一旦は良家の女人の業でないと止めるが、その熱心さにひかされて砧を部屋の中にしつらえ二人で互に打つというのが謡「砧」の筋ですが、左の章句が良くこ

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