上村松園 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
栖鳳先生を憶う 上村松園 さあ明治二十七、八年頃ですか、楳嶺先生や竹堂さんや吉堂さんなんどの方々がまだ生きていられ、栖鳳先生も三十歳になるやならずでその時分の絵の展覧会を今と比べて見ると、なんとのうのんびりとしていたようどす。その時分私が二十二歳で桃割髪に鹿の子を懸けて、ある人の手引で栖鳳先生に教えて頂くようになりましたのどす。その時分に何だかの寄付画であったと思いますが、尺八位の絹地に栖鳳先生が〈寒山拾得〉を描かれましたが、それを見て大そう感心しました。古画より生気溌剌として大変に当時評判どした。それをな、直写しさして貰いましてな……それから御殿に絵画共進会があった時に〈牧童〉を出品されましたが、二人の牧童が一人は居眠り、一人は寝転んでいる大きな絵で、これも大評判でなかなかの力作どした。これもな、直写しさして貰うたのどすが、時折に古い昔の粉本を出してそれを広げて見てその当時を憶い出します。 栖鳳先生の教え方は、こうせいと言う様に、決して師匠が押し付けずに、そのものの個性と特徴とを引伸ばすように教えられ、暗示的でその時には先生の言われた事がわからなかったが、あとで考えて見て成る程と合点
上村松園
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