江戸川乱歩 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
ある夕がた、渋谷区のやしき町を、ふたりの少年が歩いていました。もとボクサーのおとうさんをもつ井上一郎君と、すこしおくびょうだけれども、あいきょうものの野呂一平君です。ふたりとも、小林芳雄少年を団長とする少年探偵団の団員なのです。 ふたりは小学校の六年生ですが、井上君はクラスでも、いちばんからだが大きく力も強いうえに、ときどき、おとうさんにボクシングをならっているので、だれにも負けません。野呂君は井上君にくらべると、ぐっとからだが小さく、なかなかチャメスケです。ノロちゃんというあだなでとおっています。そういうふうに、からだのかっこうも、性質もちがっていますけれども、ふたりは大のなかよしでした。 「おやっ、あれ、なんだろう。へんな紙しばいだねえ。」 ノロちゃんが、町のむこうの方に、おおぜいの子どもが集まっているのを、ゆびさしていいました。 「うん、へんだね。紙しばいじゃないよ。自転車でなくて、自動車がとまっているもの。いってみよう。」 ふたりが、その方へ近づいていきますと、だんだんようすがわかってきました。 それはオート三輪を、小型自動車のように作りかえたもので、その自動車のうしろの上のと

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