折口信夫 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
古代生活に見えた恋愛 折口信夫 一 今日伺ひまして、お話を聴かして頂かうと思ひました処が、かへつて私がお話をせなければならない事になりました。恋愛の話は、只今の私には、最不似合な話であります。併し、歴史的な話でもといふので、何かさせていたゞきます。 此恋愛といふものは、段々進化して、知識的になつて来て居りまして、大分、そこに遊びが這入つて来て居る。或は、知識的に誤解が這入つて来て居る。若い時分の経験を顧みますと、男と女とで気持が違ふ、感じが違ふといふ事を、良く聞かされて居りますが、恋愛では殊にそれが多い様であります。吾々の気持から考へて見ますと、どうも男と女とは別々の触覚を持つて居つて、別々に違つた感じ方をして居るといふ事がありませう。誤解――どうも恋愛の感じ方といふものが男と女と違つたものがあるやうに存じます。――其出発点から、知識的の遊びが入り込んで来て居るのだらうと思ひますが、さういふ知識的の遊びを知らない時代の、日本人の昔の恋愛のお話をして見ます。此はまことに私の身分相応の事と思ひますから……。 恋愛そのものが、まだ出来ない時代かも知れませぬ。純粋な性欲時代かも知れませぬ。けれ
折口信夫
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