折口信夫 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
水中の友 折口信夫 いつまでも ものを言はなくなつた友人――。 もつとも 若かつたひとり――。 たゞの一度も 話をしたことのない 二三行の手紙も 彼に書いたことのない私―― 併し 私の友情を しづかに 享けとつてゐてくれた彼を 感じる。 ――友人の死んだ時 私は、嵐の聲を聞いた。 若い世間は、手をあげて迎へるやうに はなやかに その死を讚へた――。 老成した世間は、もみくしやになつた語で、 澁面を表情した――。 一等高さの教養を持つた人だけが――、 何げない貌で たゞ その姿を 消ゆるにまかせるだらう――。 さう言ふ この國の爲來りを 彼は信じて 安らかになつたに違ひない。 若い友人は 若いがゆゑの 夢のやうな業蹟を 殘して死んだ。 こればかりは、 若くて過ぎた人なるが故の美しさだ と言ふ思ひが――、 年のいつた私どもの胸に 沁む――。 何げない貌で 死んで行つたが―― ほんたうに 遠く靜かになつた人 もういつまでも ものなんか言はうとしないでもよい。 私のを温める ほのかな光りを よこしてくれ * * * 私などが、太宰君の本の解説を書いて見たところで何の意味もないこ

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