折口信夫 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
私どもの、青年時代には、歌舞妓芝居を見ると言ふ事は、恥しい事であつた。つまり、芝居は紳士の見るべきものではなかつた。だから今以て、私には、若い友人たちの様に、朗らかな気持ちで、芝居の話をする事が出来ない。私の芝居に就いての知識は、謂はゞ不良少年が、店の銭函からくすねて貯めた金の様な知識で、理くつから言へば何でもないことだが、どうもうしろめたい。どうも私の話につきまとふ卑下慢式なものを嗤つて下さい。 此は芝居に限らないが、一番問題になるのは、作者が作中の人物の中の誰に、一番愛著を持つてゐるか、と言ふ事だ。近松は、作中の人物に、愛情を美しく傾けてゐる。近松以後にはそれがない。愛情はあつても、どうも器械的な気がしてならぬ。さすがに第一流の文学者だけあつて、其を持つてゐるから、近松のものを読むと、深いやすらひを感じる。 近松以後、舞台技巧は格段に進んでゐる。舞台に出てゐる人や人形は知らないで、様々の葛藤や煩悶を重ねてゐるが、見物人は知つてはら/\してゐる、と言ふ様なとりつくめいた技巧を用ゐはじめた。近松から大内裏大友真鳥か何かで、とりつくの骨を授けられたと伝へのある、竹田出雲が、うんと技巧は秀
折口信夫
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。