折口信夫 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
日本は、美しく清らかな郷土芸能の国である。これは事実であつて、誇張でも虚構でもない。其を相共目前に展観して、我々の民族性に対して、自ら信頼を持つやうにしたい。さう思つて我々は、戦争に先つ十数年の間、春毎秋毎の「郷土舞踊民謡の会」を催して来た。 口幅ひろく感じられるかも知れぬが、日本人らしい晴れやかな生活の実現が望ましかつたのである。その結果は単に予期にそふ成績をあげえたと言ふだけでなく、実は、期待しなかつた方面に、色々な発見があり、効果を自得したのであつた。 日本芸能の起原や、それぞれの芸としての価値、又は多様なる変化において、更め見直して驚く所が極めて多かつた。我々の相当に用意してかゝつた為事が、十分酬いられたことに、深く感謝を覚えた。 多くの芸能種目の中、殆芸能の出発点からあつた姿を残してゐるものを見ては、日本の芸の歴史の深さに驚く。中世近代の濃厚な宗教信仰を印象したものや、又それが、農・山・漁村の実生活に吸収せられて、それぞれ滋味を漂し或は日本独特の清潔な色気を含んで、我々の心をよくするものがある。又その村々における古風な労働や、饗宴の印象をとゞめてゐるものは、今日我々が見ても聞
折口信夫
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