片山広子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
麦の芽のいまだをさなき畑に向く八百屋の店は一ぱいの林檎 深山路のもみぢ葉よりも色ふかく店の林檎らくれなゐめざまし 立ちて見つつ愉しむ心反射して一つ一つの林檎のほほゑみ みちのくの遠くの畑にみのりたる木の実のにほひ吾を包みぬ 手にとればうす黄のりんご香りたつ熟れみのりたる果物の息 すばらしき好運われに来し如し大きデリツシヤスを二つ買ひたり 宵浅くあかり明るき卓の上に皿のりんごはいきいきとある わがいのる人に言はれぬ祈りなどしみじみ交る林檎のにほひ 人多く住みける家をおもひいづ林檎をもりし幾つもの皿 饗宴のをはりしあとの静かさに時計を聴きぬ電気さやけく ●図書カード
片山広子
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