北原白秋 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
種子はこれ感覚の粋、 緑は金の陰影にして、幽かに泣くはわが心。 種子を哀しめ、よきひとよ、 冷たく、小さき芥子のたね、その一粒に心せよ、 歔欷けかし、日の光。 種子はこれ霊魂の粋、 生ける宝石、「時」の秒、金と緑の夜の秘密、 淫慾の芽の潜伏所、 阿片の精。 種子を哀しめ、よきひとよ、 緑は色の粋にして、 智慧と不思議と生滅の見えざる悲劇、 万華鏡。 消え去り難き幽霊の 芥子の緑に泣くごとく、 裏切したる歓会の醒めて哀しきわが心。 種子を哀しめ、よきひとよ、 歔欷けかし、日の光。 四十五年八月
北原白秋
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