北村透谷 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
一種の攘夷思想 北村透谷 三千年を流るゝ長江漫※たり、其始めは神委にして、極めて自然なる悖生にゆだねたり、仲頃、唐宋の学芸を誘引し、印度の幽玄なる哲学的宗教に化育せられたりと雖、凡ての羣流、凡ての涓※を合せて、長江は依然として長江なり。満土を肥沃し、生霊を育成し、以て今日に至らしむ、この長江、豈に維新の革命によりて埋了し去ることあらんや。 われは心酔せる欧化思想を抱けるものにあらず、我国固有の思想なる三千年来の長江は、我軽舸を載せて奔らしむるに宜しきを知るは、世に所謂国粋論者なる者に譲るところなきを信ず、然るも彼の舶載せるものと云へばいかなる者をも排斥し尽さんと計るものには、同情を呈する事能はず、況んや、気宇甕の如く窄き攘夷思想の一流と感を共にする事、余輩の断じて為すこと能はざるところなり。 余輩は綿々たる我皇統を歴史上に於て倨負するの念なきにあらず、然れども滔々たる世界の共和思想の逆流に立つて、どこまでも旧来の面目を新にする勿らん事を、熱望するものにはあらず、要するに世界の進歩の巨渦に遡つて吾運命を形くる事は、人力の為す可からざるところなるが故に、吾人は思想上に於て苟くも世界の大勢に
北村透谷
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