北村透谷 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
三日幻境 北村透谷 (上) 人生何すれぞ常に忙促たる、半生の過夢算ふるに遑なし。悲しいかな、我も亦た浮萍を追ひ迷雲を尋ねて、この夕徒らに往事を追懐するの身となれり。 常に惟ふ、志を行はんとするものは必らずしも終生を労役するに及ばず。詩壇の正直男(ゴールドスミス)この情を賦して言へることあり。 I still had hopes, my long vexation past, Hero to return――and die at home at last. 浮世に背き微志を蓄へてより、世路酷だ峭嶢、烈々たる炎暑、凄々たる冬日、いつはつべしとも知らぬ旅路の空をうち眺めて、屡、正直男と共に故郷なつかしく袖を涙にひぢしことあり。 われは函嶺の東、山水の威霊少なからぬところに産れたれば、我が故郷はと問はゞそこと答ふるに躊躇はねども、往時の産業は破れ、知己親縁の風流雲散せざるはなく、快く疇昔を語るべき古老の存するなし。山水もはた昔時に異なりて、豪族の擅横をつらにくしとも思ずうなじを垂るゝは、流石に名山大川の威霊も半死せしやと覚て面白からず。「追懐」のみは其地を我故郷とうなづけど、「希望」は我に他の
北村透谷
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