久米正雄 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
私の社交ダンス 久米正雄 確かジムバリストの演奏会が在つた日の事だつたと思ふ。午後四時頃、それが済んで、帝劇を出た時は、まだ白くぼやけたやうな日が、快い柔かな光で、お濠の松の上に懸つてゐた。 音楽の技巧的鑑賞には盲目だが、何となしに酔はされた感激から、急にまだ日の暮れぬ街路へ放たれた心持は、鳥渡持つて行きどころがない感じだつた。「さて、どうしようか。」と、僕たち二三人は行きどころに迷つてゐた。そして、此の興奮を抱いて、ムザ/\つまらない所へ行くのは、何だか惜しい気がするが、結局銀座でもぶら/\歩いて、時を消す外ないと思つてゐた。 と、後から、追ひ越して来た松山君が、 「どうです。そんなら僕らのダンス場へ行つてみませんか」と誘つて呉れた。 ジムバリストからダンスへ。何だか少しジムバリストの後味に対して済まないやうにも感じたが、生まれてまだ一度もダンス場なるものを見た事がないので、かう云ふ機会を外しては、又わざ/\其の為めに出かけでもしない限り、ダンス場なるものに近づけないと思つて、直ぐ従いて行く事にした。音楽会からダンス場へ。――それは又所謂かの「文化生活」とやらに誂へ向きな話だ。 「文
久米正雄
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。