幸田露伴 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
鳥が其巣を焚かれ、獣が其窟をくつがえされた時は何様なる。 悲しい声も能くは立てず、うつろな眼は意味無く動くまでで、鳥は篠むらや草むらに首を突込み、ただ暁の天を切ない心に待焦るるであろう。獣は所謂駭き心になって急に奔ったり、懼れの目を張って疑いの足取り遅くのそのそと歩いたりしながら、何ぞの場合には咬みつこうか、はたきつけようかと、恐ろしい緊張を顎骨や爪の根に漲らせることを忘れぬであろう。 応仁、文明、長享、延徳を歴て、今は明応の二年十二月の初である。此頃は上は大将軍や管領から、下は庶民に至るまで、哀れな鳥や獣となったものが何程有ったことだったろう。 此処は当時明や朝鮮や南海との公然または秘密の交通貿易の要衝で大富有の地であった泉州堺の、町外れというのでは無いが物静かなところである。 夕方から零ち出した雪が暖地には稀らしくしんしんと降って、もう宵の口では無い今もまだ断れ際にはなりながらはらはらと降っている。片側は広く開けて野菜圃でも続いているのか、其間に折々小さい茅屋が点在している。他の片側は立派な丈の高い塀つづき、それに沿うて小溝が廻されている、大家の裏側通りである。 今時分、人一人通ろ
幸田露伴
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