小山清 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
私はその犬を飼うことにした。「神様が私にあなたのもとへゆけと告げたのです。あなたに見放されたら、私は途方に暮れてしまいます。」とその眼が訴えているように思われたので。またその眼はこうも云っているように思われた。「あなたはいつぞや石をぶつける子供達から、私を助けて下さったではないですか。」私には覚えのないことだが、しかし全然あり得ないことではない。 公園のベンチの上で午睡の夢からさめたら、私の顔のさきにその犬の顔があった。私が顔を覆うていた本はベンチの下に落ちていた。あるいは犬がその鼻づらで本をこづいて、その気配に私は眼をさましたのかも知れない。私が掌を出すと、犬はその前肢をあずけた。私が帰りかけると、後を慕ってきたのである。 私はその犬を飼おうと思ったが、けれども、自分は軽はずみなことをしているのではないかという気もした。けれどもまた考えてみるに、私の過去は軽はずみの連続のようなもので、もはやそのことでは私は自分自身を深く咎めだてする気にもなれないのである。私はやはりいつもの伝でやることにした。私は犬の顔を眺めながら、「私さえ保護者らしい気持を失わないならば、お互いがお互いを重荷に感ず
小山清
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