小山清 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
一昨年(昭和三十年)の夏、私は筑摩書房発行の日本文学アルバムの仕事で太宰治の写真帳をつくるために、はじめて津軽を旅行した。青森に着いて県庁に太宰さんの兄さんの津島文治氏をたづねた際に、文治氏は、「魚服記」に書いてある滝は、金木町から少しはなれた処にある「藤の滝」といふのがどうもそれらしいと注意をしてくれた。私は藤の滝のことは太宰さんの甥にあたる津島一雄氏から話をきいて承知してゐた。 金木では森林鉄道を利用させてもらつて藤の滝のある処にゆき撮影した。太宰さんの生ひ立ちの記である「思ひ出」の冒頭に、「……私は叔母とふたりで私の村から二里ほどはなれた或る村の親類の家へ行き、そこで見た滝を忘れない。滝は村にちかい山の中にあつた。青々と苔の生えた崖から幅の広い滝がしろく落ちてゐた。知らない男の人の肩車に乗つて私はそれを眺めた。何かの社が傍にあつて、その男の人が私にそこのさまざまな絵馬を見せたが、私は段々とさびしくなつて、がちゃ、がちゃ、と泣いた。私は叔母をがちゃと呼んでゐたのである」といふくだりがあるが、この滝がやはり藤の滝ではないかと思ふ。撮影しに行つた際、私達はそこで弁当をつかつたが、傍には
小山清
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