坂口安吾
坂口安吾 · 日本語
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坂口安吾 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
急行列車が駅にとまると、二人か三人の私服刑事らしき人物が車内の人物の面相を読みつつ窓の外を通りすぎる。私の終戦後の遠距離旅行はこの正月からのことであるから、こういう人物の駅々の影のような出迎えがいつごろから始まったのか知らないが、月を追うてこの出迎えが厳重に、どの駅でも規則正しく行われるようになってきた。 これには無論それだけの理由があるに相違ない。まず共産党幹部の地下潜入、朝鮮戦乱や国際情勢の悪化につれて国外からの密入国や国内からの脱出などゝモグラ族の移動往復が相当ヒンパンであろうから、イヤでも交通の要所々々に目玉を光らせる必要があるのであろう。 交通路の要所に関所をかまえて目玉を光らせるという方法は大昔からのことであるが、義経がどっちへ逃げたか、豊臣の残党がどうしたか、と云っても、その取締りは案外に無邪気なもので、草の根を分けてもという全国一丸の警察網を張りめぐらし、長年月にわたって徹底的に断圧、根絶を期したというのは現代に於ては昭和初頭に於ける共産党、過去に於ては切支丹宗門があるのみであろう。 切支丹の断圧は秀吉に始まったが、家康の晩年に於て強化された。彼が自分の手で辛うじて完成
坂口安吾
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