佐藤垢石 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
私は、昭和のはじめ、世の中が一番不景気の時代に失職してしまった。失職当時は幾分の余裕はあったのであるけれど、食を求めて徒食している間に、持ち金悉くをつかい果たしてしまったのである。 多くの家族を抱えて、職のないことは胸が詰まる思いである。東京にはあきらめをつけた。そして、東北地方のある小さな都会へ流れて行ったのである。そこで、地方新聞の配達をはじめた。しかし、百五十部か二百部の小新聞を購買し、これを配達していたのでは、到底七人の家族を支えきれるものではない。衣類、時計、書籍まで売り食いし、とうとう新聞の集金まで手をつけてしまった。新聞配達は、それでおしまいになった。 また家族を纏めて、そこから五十里ばかり隔てた次の都会へ流れて行った。しかし、市中に住むということは、生活費が嵩むおそれがあるので、そこから一里ばかり離れた農村に行き、ささやかな家を借りて住んだのである。私は、毎日毎日職探しに市中へ出て行った。 なにしろ浜口内閣の不景気政策が、充分に効き目を現わした後の世の中であったから、産業が不振に陥って、幾日も幾日も市中をさまよい歩いたけれど、人を求むる会社とか商店とかいうのは全く見つか
佐藤垢石
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。