佐藤垢石 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
しゃもじ(杓子) 佐藤垢石 二、三日前、隣村の老友が私の病床を訪れて、例の「しゃもじ」がまた出たという。 貴公が、出あったのか。 いや、僕ではない、近所の青年が度胆を抜かれよった。 さては、彼の狸め、今もって頑健であるとみえるな。 怪物「しゃもじ」のことについては拙著「狐火記」のうちに書いておいたが、しかしこのような剽軽な変化は、二度と再び出るものではあるまいと当時考えていたから、このたび再び出現したというのをきいては、まことに今昔の感に堪えない。 今から、四十二、三年も昔のことであるから、私の青年時代である。隣村の東箱田にある村役場へ用事があって、ある日の午後から出かけていくと、折りよくこの老友も役場で雑談に耽っていた。 今は既に老友となったけれど、この老友も私と同じに歳は若く、気は盛んであった。久し振りの機会であったので、役場の小使に頼んで、濁酒一升を取り寄せた。われら二人は、豪酒であったから、僅かに一升を酌みあったのでは、腹の虫の機嫌に触れぬ。 とはいえ、季節は折柄養蚕上簇に際し、百姓は働けども働けども忙しい。しかも、働き盛りの青年が、酒をあおって節季を等閑視したとあっては、荒神
佐藤垢石
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。