三遊亭金馬 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
犬は三日飼うと三年恩を忘れないというが、犬は好きで十二、三歳頃、本所相生町の経師屋の伯父の家に奉公している時分に、雑種の犬を一匹拾ってきて伯父に叱られたことがある。私が三度の御飯を一膳ずつ少なく食べてこの犬にやりますから飼ってやってください、と無理に頼んでおいてもらった。 その頃、本所から四谷箪笥町、芝片門前、三田の赤羽橋辺まで襖を積んだ車を引いて使いにやらされる。行きにその犬を車の梶棒へ綱でつなぐとグングン車を引いてくれる。先方へ行って使い賃をもらうと、パンを買って半分は犬に食べさせて、空になった車へ犬を載せて引いてくる。今でもバタヤさんが犬に車を引かしているのを見ると、その頃のことを思いだす。 ぼくがあまり犬を可愛がりすぎるので、伯父がぼくに内緒でどこかへ捨ててきたらしい。二、三日の間は仕事も手につかず、食べる物もうまくない。それこそ血眼になって探したがわからない。 去る者は日々に疎し、というか、二月、三月とすぎ、半年もすぎるとまるで思いださないというより、どんな犬であったか思いだせないくらいになっていた。すると或る日、京橋八丁堀まで例によって車を引いてゆき、帰りに、その頃「中外商
三遊亭金馬
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