鈴木三重吉 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
青い顔かけの勇士 鈴木三重吉 一 トゥロットのお家は貴族で、お父さまは海軍の士官ですが、今は遠方へ航海中で、トゥロットはお母ちやまや女中のジャンヌたちと一しよに、海岸の別荘でくらしてゐます。トゥロットにはイギリス人の或ミスが、まいにち家庭教師にかよつて来て、町中や浜べへつれて出たりして、いろ/\のことををしへてゐます。 「おぼつちやま、ミスがいらしつて、おまちになつていらつしやいますよ。」と、けさもジャンヌがよびに来ました。トゥロットは、つんぼのやうなふりをして、ぽかんと窓の外を見てゐました。 「これ、坊や。ジャンヌがよんでるのが聞えないの。」とお母ちやまがおつしやいました。 「聞えたの。」と、トゥロットは、むじやきな目を上げてこたへました。 「だつてお母ちやま、わかつてるでせう? ほら。ぼく、ミスと一しよに出かけるとあき/\してしまふの。」 すると、お母ちやまは、すこしけはしくまみげをしかめて、 「さあ、早くいつてらつしやい。おとなですね。ミスのお話をよくおぼえて来て、お午のときにお母ちやまに話してちようだいね。」 トゥロットは、いや/\こつちへ来て、なさけなささうにジャンヌにもたれ
鈴木三重吉
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