壺井栄 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
フミエと洋一の家には、裏に大きな柿の木が一本あります。それは子どもの一かかえもあるほどりっぱな木でした。小さい木は幾本もありましたが、とびぬけて大きいのは一本だけです。柿のあたり年は、普通一年おきだということですが、この柿は毎年なるのでおじいさんが生きている時分にはじまんのたねでした。こんな柿は村に二本とないからです。その実の大きくてうまいことといったら、三太郎おじさんなど、柿の実のうれるころになると、まるで子供のようにうれしそうな顔をして、柿をもらいにきました。 「まったく、柿も年をとるとだんだん実が小さくなるというのに、これはめづらしいですな。来年の春には一つ、この木をつがしてもらいましょう。」 そのくせおじさんは春になると、つい柿のことをわすれてしまいました。 「おじいさんにそういって、うちの小さい木を一本もらえばいいのに。」 あるとき洋一がそういうと、おじさんはにこにこしながら、 「いいよ。しんるいなんだから、柿ぐらい食べにきてもいいだろ。」 といいました。三太郎おじさんの家はフミエや洋一のおかあさんのおさとで、おじさんは二人のおかあさんの弟です。その上三太郎おばさんは洋一たち
壺井栄
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