寺田寅彦 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
卵形といえば一方が少し尖った長円い形にきまったようなものであるが稀には円形の卵もある、亀、梟などがその例である。また鵜やかいつぶりの卵などはほとんど両端の丸みが同じで楕円形をしている。しかし一般にはほとんどいわゆる卵形で一方が尖っている。特に著しいのは千鳥や海鴨などのである。 こんな風に卵が色々の形をしているのは何故だろうと物好きな学者は研究したものである。先ず自然淘汰の結果として説明するものが多い。例えば海雀の卵は多く絶壁の岩の上に産まれるので円錐形に尖ったのの外は岩から転げ落ちてしまうと考えられている。また片方の尖っている方が親鳥の腹の下へ沢山詰め込むのに都合がよいからだという説もある。 ところが近頃この事について斬新な力学的の方面から説明を試みた人がある。一体卵が産み出さるる前にどんな道筋を経て来るかというに、始め卵黄だけが輸卵管へ出て来ると、そこで白味が来て取り巻く、これに膜が出来てその上に殻が分泌され管から押し出されるうちに固まってしまう。かくのごとく卵が出来上がるまでには管の内側から始終に圧迫を受けている。管壁の摩擦に打勝って卵を押し出すために卵の後方の環状筋を断えず収縮し
寺田寅彦
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