中野鈴子 · 日本語
全文
原文 (日本語)
足を伸ばす
体の横に手を垂れて
目を閉じる
ねむろうとして自分の呼吸を聞いている
かならず闇がおそいかかる夜というもの
夜
夜はかならずきて
わたしはかならずねむったにちがいなかった
夜が来ればねむったであろう
そして夜
ねむれぬままにも
ねむったであろう
五十年の美しい昼と夜
一個の生きとし生きる者として
春の花
冬の雪にも
お前はいたのか
お前はいたのか
お前は赤ん坊でもあったのか
あのようにも美しい
桃のようでもあったのか
いまねむろうとして
夜の闇が
いま はじめて見るもののように冴えて来る
●図書カード

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