中谷宇吉郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
二十年ぶりにアメリカを廻ってみて、一番感じたことは田舎の隅の隅まで、道路が非常によくなったことである。大都会やその近郊なら、そう驚きもしないが、例えばニューハンプシアの北の果て近い僻地までがそうである。二十キロくらいも行かねば、次の村がないようなところでも、自動車の影がうつりそうなアスファルト道路が、縦横に走っている。こういう道路は何も中央政府が造るのではなく、全部自動車の使用者が造るのだそうである。ガソリン一ガロンについて、何セントだったか、税金がかかっている。その税金は道路の修理のためにとるもので、ほかの目的に使ってはいけないことになっている。ところが、その金が案外大きい金額になるので、なかなか使い切れない。こういうところの道路まで、ぴかぴかにしても、まだ余って困るのだそうである。 そういえば、マサチューセッツ州などでは、方々で、日本なら第一級の立派な道路を、盛んに掘り返して修理していた。それも何セントかの口の由である。最近こういう話があった。道路という道路は、全部ぴかぴかにしてしまったのに、まだ金が余って困ったところがある。それでその残り金で、施療病院でも建てようという案が出た。
中谷宇吉郎
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