中谷宇吉郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
宇宙旅行の夢くらい、素晴らしくて、又罪のない夢はない。そういう夢に、いよいよ実現の可能性が出てきたのならば、これは戦争の悪夢にうなされているわれわれには、何よりの清涼剤になるであろう。アメリカの海軍が、時速五千八百マイルのロケットを註文したことは、この可能性を実証するものだが、まず人工衛星をつくることが、宇宙旅行の第一歩である。これさえ出来れば、それを足場にして、そこから宇宙船をとび出させれば、比較的容易に、天体までの旅行が出来るのである。地球からすぐ天体へとび出すのは、ベース・キャンプをつくらないでエヴェレストへ登ろうとするような話である。エヴェレストの頂上をきわめようと思ったら、まずベース・キャンプをつくらねばならない。そして人工衛星が、この場合のベース・キャンプなのである。 それで人工衛星をつくることの可能性如何が、宇宙旅行が科学の問題になるか、空想小説の種になるかという岐れ目である。今度アメリカ海軍が発註したロケットの規格は、この人工衛星をつくる一つの可能性を示した点において、かなり重要な意味がある。 第二次世界大戦の末期頃に、ヒットラーが、この人工衛星をつくる研究を指令したこ
中谷宇吉郎
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