中谷宇吉郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
今度の土佐滯在中、今一つの收穫は、尾長鷄を見たことである。 尾長鷄のことは、中學時代に、進化論の一つの例證として、教わったこともあるが、その後あれは一種の純粹培養であって、種の變化ではない、というような話を、何かの科學雜誌で讀んだ記憶がある。 そのいずれも、遠い昔の話であって、その後まるで專門ちがいのことなので、何時ともなく忘れていた。ところが今度の高知訪問中、竹下文雄氏の好意によって、實際に尾長鷄を飼育している人の家を訪ね、その飼育法及び尾長鷄の實物を見て、大いに昔の興味が蘇って來た。 現在、尾長鷄を飼育している人は、ほとんど全部、いわば道樂にやっている人たちのようである。別に縣などから補助があるわけでもなく、又尾長鷄がひどく高價に賣れるのでもないらしい。農業が本職であって、尾長鷄の飼育は、いわば記録作り的な興味から來る道樂というのが、一番あたっているようである。 この飼育は、幅一尺あまり、高さ六尺くらいの木箱の中で行われる。鷄には迷惑な話であるが、この木箱の上部に止り木があって、鷄はほとんど一生涯、この止り木にとまっている。そして眼の前においてある餌箱の中の餌を食べて生きている。尾
中谷宇吉郎
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