中谷宇吉郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
吾妻徳穗さんの歌舞伎舞踊(カブキダンス)が、先年アメリカへ來た時は、まず大成功といっていい成績であった。 シカゴでも、連日ほとんど滿員つづきで、しかも觀客は、大部分アメリカ人であった。日本からの藝能家の中には、在米日本人を當てにして來る人も、時々あるようである。しかしあの歌舞伎舞踊は、その點、堂々として、アメリカ人を相手に乘り込んだ形であった。 この調子なら、日本の歌舞伎なども、そのうちにアメリカへも、ヨーロッパへも、出かけられそうな氣がした。しかしそれは門外漢の氣樂な想像であることを徳穗さんから聞かされて、なるほどそういうものかと思った。 第一の難點は經濟問題である。ヒューロックのような一流の線で、しかも到るところで滿員つづきの盛況であったが、それでもやっと收支のバランスが採れた程度であったという。 あの舞踊のアメリカ進出は、素直に見て、日本の文化をアメリカ人に認識させる上で、非常に貢獻をした、と私は思っている。日本文化の國外宣傳には、政府は從來相當な金を使って來た。しかし吾妻さん一行が殘した足跡は、いわゆる對外文化事業のそれ等に比して、少しも劣っていない。研究所へ行っても、近所の家
中谷宇吉郎
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